- 作者: 沢木耕太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/03/28
- メディア: 文庫
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あまり言葉はいらない。ただ読んでほしいと思える。何も特別ではない人たちの日常を切り取った始まりも終わりもない小さなエピソードの結晶。
おれはある人の言葉に感心し、ある人の行動に苦笑し、ある人の想いに感動して涙を流し、ある人の考えに共感したりした。読んだ後、何となく元気になって気分が楽になる。そんな作品だと思う。
この本のテーマからは外れるかもしれないのだが・・・
本書中の一編「砂漠の雪」で、イラクの若手アラビア書道家が登場する。本編の最後はその書道家の身を案じるところで終わっているのだが、湾岸戦争どころかイラク戦争まで経てしまったいま、その書道家はどうしているのだろうか。生きているのだろうか。この書道家だけではなく、イラクの芸術はどうなってしまっているのだろうか。
アラビア語は全く読めないが、その字体の美しさは何となくわかる。地図に地名を書くときは手書きの文字を書き込む風習があるようで、手書きのアラビア語で書かれた地図を思い浮かべるだけで心が躍る。
おれに理解できるかどうかは別として、すばらしいであろうアラビア書道があって、それに打ち込んでいる書道家が打ち込むことができずに戦場で死んでいくのはあまりにも悲しすぎる。自分の好きなことに集中できる。そんな世の中が一番なんだけどな。