Inspirational Mind

2003.10.11 - 2011.04.11

優れたデザインが提供してくれる空気

ゴールデンウィークとは不思議なもので、いつもの週末よりも意識的に外出しなければ、活動的に行動しなければという気分になる。でも、いつもと違う場所に行くことがリフレッシュにもなり、場合によっては仕事をしていく上でも刺激になる、吸収できることがあるというのが、今日の話。

自分は現在大岡山に住んでいる。東急目黒線大井町線が交わった意外に便利な駅で、目黒から地下鉄都営三田線南北線に連結していることと、大井町経由で品川にも短時間でいけるため、路線頭上で表示されているイメージ以上に交通の便は良い。東工大の最寄り駅としてが最も有名なのだろうか。

転居するまで気づかなかったのだが、自由が丘が驚くほど近い(いや、もちろん個人的な感覚だが)。東工大の構内を通り、桜の並木があつらえてある遊歩道をすすむと10数分で自由が丘に着いてしまう。そのせいか、日曜日の夜に自宅で飯を食った後に、のんびりと自由が丘まで歩き、スターバックスでコーヒーを飲んでまた歩いて帰ってくるというちょっとした贅沢が、ここ最近の週間になっている。

今日は自由が丘ではなく、自由が丘の隣の九品仏ちかくの雑貨屋? である「D&DEPARTMENT PROJECT TOKYO(http://www.d-department.com/jp/shop/tokyo/)」が目的地。2週間前暗いに相方が散歩がてらに行ってきたようで、その後聞いた際には個性のある品々が売っているよくあるちょっと「おされ」な雑貨屋くらいにしか思っていなかった。

九品仏の駅からはそれほど離れていない、ちょっと、いや、だいぶ古いマンションの1階と2階を改装していて、2階が店舗、1階にはカフェが併設されている。店舗には家具と文具、キッチン雑貨、食器、少々の食品が比較的ゆとりをもって配置されていて、それだけ聞くとよくある店だが、D&DEPARTMENT PROJECTを牽引しているナガオカケンメイ氏の書籍や、PROJECTから生まれたムックや雑誌、そこから醸し出される一貫性を感じるコンセプトが、店の空気や並べられている品々をちょっと違ったものに見せてくれる。


実際、店舗の奥にはギャラリーが設置されていて、たまたま今日は「毎年、日本全体を眺めて、自分たちの国を再認識する」という企画である「NIPPON VISION3 DESIGN TRAVEL」の東京展をやっていた。日本各地の観光、交通ポスターや小冊子など、その土地からインスピレーションを得て生まれたデザインが、都心では生まれない独自の世界観を持ちはじめていると、郷土料理や土地に根付いた旅館などに照らし併せて着目されている。

このプロジェクトの一環なのか、D&DEPARTMENT PROJECTのセンスで場所や人、食を年に4回、13年間がかりで発刊するトラベル本などもあり、「観光もデザインへ」というキャッチのもと、既に北海道と鹿児島が発行されている以前、六本木ヒルズ近くのTSUTAYAでこれの北海道版とナガオカケンメイ氏の本が平積されていて、その場で「ナガオカケンメイの考え」という日記調の本を買ったことがあった。当時、氏が情熱大陸に取り上げられた直後だったのかもしれない。

本もそうなのだが、こういった店舗の価値はそれらが生み出す空気だと思っている。深い思慮があるわけではなく、自分がそうだからなのだが、洗練された空間デザインはその場所自体に独特の空気を持っていて、その場にいるだけでチョットした高揚感を感じることができ、まるで自分がそういったデザインの一翼を担っているような錯覚さえ引き起こす。いや、起こされる。

本の購入などまさにそうで、本を買って読む。読んでそれに影響されて行動したりすると、その感覚はより高まる。ようするに気分がいいわけだ。でも、その気分だけで気分がリフレッシュできる。その空間にいるだけで感覚が透明感を増してくる。デザインが人に与える影響ってそういうもんなんじゃないかと思う。

たぶん、普段の仕事に照らしあわせても同じだ。いいノートや筆記具を使えばメモを取る気になるし、きれいなオフィスや会議室で働いていれば、そういった環境で働いていることを自覚して行動するようになるかもしれない。現時点でのiPhoneとそれ以外、Appleとそれ以外で起きていることも、それに近いのではないか。決定的な違いは「空気」。人に感じさせるものが違うから、これだけの差が生まれている。

・・・そんなことを感じた一日だった。無意味な日なんかないね。

d design travel HOKKAIDO

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